2026.07.24 コラム 石畳がキャンバスに!イタリアの路上絵師「マドンナーリ」
イタリアの街を歩いていると、アーティストがチョークで石畳に絵を描いているところに遭遇したことはありませんか?まるで美術館から飛び出してきたような名画の数々。
実はこれ、「マドンナーリ(Madonnari)」と呼ばれる路上絵師たちによる芸術なんです。
「マドンナーロ(Madonnaro、複数形:Madonnari)」という名前は、「Madonna(聖母マリア)」が語源。
16世紀頃には、巡礼地や教会の前で聖母マリアの絵を描き、人々から喜捨を受けながら旅を続ける芸術家たちがいたと伝えられています。
現在では宗教画だけでなく、ルネサンスの名画や風景画、迫力あるトリックアートなど、その表現は実にさまざま。
観光シーズンには街角で作品に出会えることもあり、道行く人々の目を楽しませています。

画材はチョークなので、雨が降れば作品はあっという間に消えてしまいます。
「もったいない!」と思ってしまいますが、その儚さこそがマドンナーリの魅力。
完成した作品だけでなく、一色ずつ丁寧に描き上げられていく制作風景も、多くの人を惹きつけています。
そんなマドンナーリに出会える街として、やはり外せないのがフィレンツェです。
美術館で本物の名画を鑑賞したあと、街角でチョークによってよみがえった作品に出会う──そんな体験ができるのも、芸術の都ならではの魅力でしょう。
実は、フィレンツェのマドンナーリたちは好きな場所で自由に絵を描いているわけではありません。
市が定める「路上芸術(Arti di strada)」の制度のもと、決められた場所や時間で活動しています。
世界遺産の街並みを守りながら、現代のアーティストたちが活躍できる場もしっかり確保する。
そんなイタリアらしい価値観が、この制度からも伝わってきます。

実はこの話を教えてくださったのは、20年近く前にフィレンツェで偶然お会いした日本人のマドンナーロの方でした。
「日本人のマドンナーロに出会えるなんて!」と驚いたことを、今でも鮮明に覚えています。
ふと懐かしくなって調べてみると、その方はSaito Tomoteruさんという世界的に活躍するマドンナーロで、マドンナーリの最高峰ともいわれる大会で最高位を受賞した経歴の持ち主でした。
当時はそんなすごい方だとは知らずにお話ししていたので、後から知って二度びっくり。ぜひまたお話を伺ってみたいものです。
そんなマドンナーリたちが憧れる舞台が、ロンバルディア州マントヴァ県グラツィエで毎年8月に開催される「Incontro Nazionale dei Madonnari」です。
聖母被昇天祭に合わせて1973年から続く歴史ある大会で、100人を超えるアーティストが国内外から集まり、聖堂前の石畳を巨大なキャンバスに見立てて丸一日以上かけて作品を描き上げます。
完成した作品はもちろん圧巻ですが、炎天下の中で黙々とチョークを重ねる制作風景もまた見どころのひとつ。
近年では世界各国からアーティストが参加する、マドンナーリの国際的な祭典として知られています。
昨年の様子がYoutubeで紹介されていました!
雨が降れば消えてしまうからこそ、その作品はまさに一期一会。
もしイタリアでマドンナーリを見かけたら、完成した作品だけでなく、一枚の絵が生まれていく過程にもぜひ目を向けてみてくださいね!!
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